東京高等裁判所 昭和29年(ネ)568号 判決
控訴人が昭和二十六年六月十一日に被控訴人から金十万円を返済期同年十二月十日、利息月一分二厘五毛の約定で借受け、本件物件を売渡抵当として控訴人の占有に留めた儘右借受金債務の担保に供したことは当事者間に争のないところであるから、反証のない本件に於ては右売渡抵当契約により本件物件の所有権は被控訴人に帰したものと認むべく、且別段の事情の認め難い本件に於ては被控訴人は右債券の弁済期が過ぎても弁済がないときは右物件を換価して弁済に当てる為債務者たる控訴人に対しその引渡を請求し得る権利を有するものと解するのを相当とする。
而して本訴は畢竟被控訴人が右物件の所有権に基ずき控訴人に対してその引渡を請求するものに外ならないものと解せられるところ、控訴人が被控訴人に対し右債権の弁済として数回に合計金九万円を支払つたことは当事者間に争のないところであるけれども、控訴人主張のように右九万円の全額が元本に充当されたこと及び別に利息の弁済があつたことについては之を認めるに足る証拠が存しないから、右九万円は先ず利息に充当されたものと解すべく、従つて元本の相当額は未だ弁済未了の儘残存しているものと推定するに難くないのであつて、右債務の弁済期がすでに過ぎている以上、控訴人は右九万円の弁済があつたことを理由として被控訴人の右物件引渡請求を拒否し得ないものと言うべく、従つて控訴人の抗弁は理由のないものと言わなければならない。